難解アニメ『ゲキドル』感想 つまらない!と言うバカたちへ。

ゲキドル 感想 考察2,021
2,021

『ゲキドル』12話(最終回)まで見たけど、何が何だか分からない!っていう理解力がなく、考えようともしない量産にわかオタクに向けた記事です。

結論からいうとこの作品は素晴らしいけど、万人向きではないという印象だ。序盤は演劇・アイドルものがベースかな?と思っていたら、中盤では百合やホラー、終盤ではシンギュラリティや時間遡行による世界改変といったSF、最終盤では再び演劇ものに戻る構成。ジャンルの曖昧さが難解さにつながっている1つの原因だ

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考察『ゲキドル』のメインテーマ・最も伝えたかったポイントとは?

ストーリーや演出は難解だが、伝えたいメッセージは割とシンプルで明確なものだったと思う。私が辿りついた結論は以下である

生きていれば多くの辛いことを経験する。だが、その絶望の中で脚を止めることなく、他者の甘い言葉にも負けず、己の信念をしっかりと持って行動すれば道が開ける

このメッセージを軸に作られているのが『ゲキドル』というアニメだ。このテーマを実現させるために「演劇もの」というジャンルがガッチリとハマった

なぜ「演劇もの」ジャンルを選んだか?

このアニメは1視聴者ではなく、自分ならどうするか?と考えながら見るのが正しい見方である

せりあ

「この世は舞台。人はみな役者。私たちは出来上がった台本をただ演じてきたわけではない。舞台の上で、この世界でみんな生きてきた。未来なんて分からない。でも、どんな未来になっても、きっとずっと私たち演劇を続けていく。ゲキドル第12話:終わりよければすべてよし 今未来への幕が上がる」

最終話の予告で主人公せりあが言うように、私達はみんな役者である。それは観客ではなく舞台に立って“演じる”という者である。私達は家族に見せる顔、友人に見せる顔、恋人に見せる顔、上司や部下に見せる顔、それぞれの顔を使い分けて“演じる”

役者という職業は、脚本家・監督という絶対的な支配者によって自分を殺して“演じる”ということが求められる。しかし、脚本家・監督の高く俯瞰的視点から見えなかったものも、役者という視点から見れば見えなかったキャラクター心理などが見えてくる

求められている事と、理想への追求のギャップ。これは役者をやってない者でも分かる心理的な葛藤だ。無難に60~70点を目指すか、0or100の大勝負に出るか

せりあ⇔いずみの演技の対比について。また、せりあの完全コピー能力について

せりあ・いずみの演技に対する考え方が顕著に表れたのは第10話「世界の創造とその他の事」のBパートだ

かをるん(ミキ・シュタインベルク)の同僚キョウコ・アンダーソンが残したノートを元に、新しい演劇を考えたアイスインメンバーたち。このノートはキョウコ視点で描かれたミキを主人公とするものだ

ミキを演じる最適なメンバーは誰か? 意見が真っ二つに割れる。一方はせりあ、他方はいずみ。それぞれのメンバーが己の信念を胸にオーディションで役が争われる

初手はいずみ。さすが人気舞台女優!といった所か。まったく隙が無い完璧な役作りをしてきた。求められていることを完全に理解して実行している。対する せりあは、いずみとは別の角度で攻めてきた。ミキならどうするか? キョウコ目線のミキでなく、ミキ自身はどうするか? というものをしっかり考えてアドリブを混ぜる

この人間性あふれる自然体な演技と役作りに、いずみは潔く負けを認めた

1話~9話までせりあの「コピー演技」はあいり和春は面白みが無いと否定されてきた。アリスインメンバーと過ごす過程でコピーからオリジナルの演技になったのだろうか?

否、私はそうとは思えない。むしろ、せりあの演技は最初からオリジナルのものに見える。第一印象ではコピーすることしか出来ない少女に見える。実際、6話「人形の家」ではせりあの過去が描かれ、なぜコピーに執着するようになったかが分かる

しかし、このせりあ=完全コピー能力という印象はミスリードだと睨んでいる。なぜ私がそう思ったかは2週目をしたときの第1話「芝居」にある

アイスインシアターに初めて来たせりああいりとドールの『まなつの銀河に雪のふるほし』のセリフを完璧に覚えるというシーンがある。このシーンの直後に物凄い違和感がある

せりあ

「えとー、じゃ、じゃあ君は自分が、ど、どこから来たのか知ってるの? あ…えとー」

(あれ?私……なにしてるんだっけ? 次の…セリフはー…)

「君はどこからっ!」

(私、なんでここに居るんだっけ!?)

先ほどまで目を見張る演技をしていた彼女は、台本を持った瞬間なぜか過剰なくらいしどろもどろになり挙句の果てにはぶっ倒れる。このパニックを起こした意図とは何か? それは最終話の予告のこのセリフにつながる

せりあ

「この世は舞台。人はみな役者。私たちは出来上がった台本をただ演じてきたわけではない。舞台の上で、この世界でみんな生きてきた。未来なんて分からない。でも、どんな未来になっても、きっとずっと私たち演劇を続けていく。ゲキドル第12話:終わりよければすべてよし 今未来への幕が上がる」

つまり、せりあは用意された台本・脚本・シナリオを否定し、キャラクターや世界を再構築するスキルがあるということが読み取れる。単なるコピーではなく、自身をキャラクターに落とし込み新しいキャラクター像を生み出している

最終話では世界を再構築し、観測者や支配者(クロノゲイザーやイノヴェイター)から解放された。大いなる力に屈しず、自身の手で道を開いている

意味不明に見えるようで、しっかりと練られたストーリー構成だ

ドールの甘い言葉・思考を停止した人間たち

『ゲキドル』もう1つのテーマ、それは思い込み・妄想からの脱却だ

仏陀(ブッダ)は悩みを3つに分類した。1つ目は「欲望」2つ目は「怒り」そして、3つ目は「妄想」と。

このテーマは4話から6話にかけて、よく描かれている。せりああいりの関係を軸に、人間の精神的脆さがある

4話「バースディ・パーティー」

あいりの心理描写が上手い! 3話と4話のパフェシーンが秀逸だ。食べ始めはおいしそうに食べていたのに、周りが気になりだし拒絶する

ジュニアアイドルの仕事でお金回りが良くなり、欲しい物が手に入るようになる。だが、なぜか満足できず空っぽな心を描いている。いずみと出会いが本当の世界が見つかる過程

「わあ~」

「気持ち悪」

↑3話

↓4話

いずみに憧れて入ってきたミーハー:せりあだったが、そんな彼女を少しずつ認めるあいり。同じパフェシーンで、せりあと一緒なら周りの目を気にせずに幸せな時間を共有できる

だが、第4話終盤ではディープなシーンへと変わる

あいりはキスしたことで逃げられたと思って「なにやってんだ…」とぼそってなり落ち込むが、実際は
“誕生日あめでとう”っていう言葉にトラウマが蘇り逃げるという すれ違う様の描き方が上手い

5話「桜の園」

悪意がない悪、他者攻撃といったのが描かれた回だ

4話ではラブラブデートしたのに、5話ではバッチバチの修羅場になる。ほんとねー見てるこっちは振り回されますよ! まあ、振り回してくる作品嫌いじゃない。むしろ好物です

あいりの真剣な想いをまったく気にすることなく、キスを“ノリ”と表現する。悪意なき言葉でも、ときには凶器となり心を傷つける

6話「人形の家」

個人的に2021年冬アニメで1番面白かった回だ。辛いことが無い幻想の世界で生きていくのか?、悲惨な真実を受け入れて前に進んでいくか? と問いかけてきた回だった

自身を守るため、自分が犯した罪の記憶を書き換える。逆に自分は被害者なんだ!という呪いをかけ、精神を保とうとする

ドールになぐさめて思考停止する様、愚痴を話すときのせりあが幼少期に戻るという演出、せりあのヒステリックさ・ぬいぐるみと会話する不気味さ、あらゆる怖さとメッセージ性があった

ドール

「あなたは誰? 私は誰? 私はあなた。あなたは私。5年前の“あの日”2人は1人になった。迷い、悲しみ、怒り、そして喜び。みんな私を持っているけど、みんなは私を知らない ゲキドル第6話:人形の家 今過ぎ去った日の幕が上がる」

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『ゲキドル』が難しく、意味不明な3つの理由

『ゲキドル』難解、意味不明という声をよく聞くが、実際どういう所が難しいのか?

  1. あえて難しくしている

  2. 情報量の過多

  3. ジャンルが定まっていなく、ターゲット層が限られる

あえて難しくしている

私は1番の要因はこれだと考えている。『ゲキドル』のメインテーマ・メッセージ性が「他者からの解放であり、独立」だからだ

答えがない問題を常に考え、たとえ答えが見つかっても自問自答をし続けること。難しい事象・概念を自分の領域に落とし込み単純化させる能力。生きていく以上こういったスキルは必須だ

大事なものはそう簡単には手に入らない。あるいは既に持っていても、その存在に気が付かなければ持っていないのと同義である

明晰な思考ができる人は珍しいし、勇気のある人は天才よりもさらに珍しい。

情報量の過多

まあ、7話~8話くらいまでは何とか理解できた。だが、9話~10話以降は3周した今でも完全には理解できていない

この辺りから急に固有名詞や長い人名、物理学の用語が出てきて取っ付きづらい。例えば、

  • クロノゲイザー
  • イノヴェイター
  • エンリビアンノ
  • クロノクリスタル
  • 救済計画サベーション
  • トワイライトディメンション
  • 余剰次元

こういった用語が特に説明されずに、さらなる急展開になるから頭が????とパニックになり、はてなが5つくらい出る。←はてな4つやん!

あとまあ、キャラクラ―視点が多いってのも難しいポイントの1つ。せりあ視点から見たせりあ、あいり視点から見たせりあ、あるいはその逆パターンなど

ジャンルが定まっていなく、ターゲット層が限られる

この理由は内容が難しいというよりは、最後(12話)まで見れる難易度という意味で使う。私は『ゲキドル』というアニメ作品を評価しているが、他人にオススメは絶対にしない

アイドル好きはSF要素求めてない。SF好きはキャラクラ―デザインの幼さに敬遠。幼いとはいえ最年少中3で、ロリコンには刺さらないだろうし。百合好き・萌え好きがホラー苦手だろうし……

色んな要素が詰まっているため多角的に見れる面白さはある。だが、1つ1つがディープでクセが強いので割と上級者向けアニメと感じる

感想・考察まとめ:ターゲット層は限られるが、15年・20年後も通用するカルトアニメ

同じ2021年冬アニメで、かなり期待してた『アイドリープライド』が満足できなかったので、テキトーに見始めたら予想以上に凄い作品だった

さまざまな要素が入っていて一見ゴチャゴチャしているように見えるが、細かい描写まで洗礼された作品だ。難解かつ状況説明が少ないため、ハマる層は限られている。だが、見れば見るほど考察の余地が豊富である

にわかオタクには絶対にオススメにしなが、もし貴方がさまざまな解釈、さまざまな角度から見れるアニメを探しているならこの作品を見て欲しい! ネタバレ多めで書いたが、ネタバレありでも十分に面白い作品だし、複数の解釈が楽しめる

最後まで読んでくれて、ありがとう! 黒木白桃でした。

TVアニメ「ゲキドル」公式サイト

TVアニメ「ゲキドル」公式サイト
オリジナルアニメーション「ゲキドル」2021年1月放送開始!

TVアニメ「ゲキドル」PV・2021年1月放送開始!

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