現在、劇場版『Crown Handler第2章』が公開されている人気アニメ『プリプリ』のTV版を紹介します。女子高校生たちがスパイとして暗躍することを描いた今作は、圧倒的な世界観と息を飲むようなかっこいいアクションシーンが魅力だ
共和国と王国側の2つに分断した世界は物理的な壁のみではなく、移民問題・貧困・階級格差といった「見えない壁」によって分けられた。彼女たちはその壁を壊すために戦うことを決意する
『プリンセスプリンシパル』が面白い3つの理由
- 迫力あるスパイアクションがかっこいい!
- キャラクター1人1人に魅力的なバックボーンがある
- 東西に分裂した19世紀末ロンドンという設定が緻密
迫力あるスパイアクションがかっこいい!
彼女たちが女子高校生だからといって甘く見てはいけない。真の顔は「影の戦争」の最前線にいる超一流のエージェントだ
あらゆることに対処でき、特に潜入工作が得意なアンジェ。王女という特別な外交特権と地位を持っている二重スパイ:プリンセス。カーチェイスと妖艶な肢体を駆使したハニートラップが得意なドロシー。人工声帯を使った声の変化・記憶力で通信網をかき乱すベアトリス。圧倒的な体術と剣術を持っているが、はったりや演技が苦手なちせ
5人それぞれの得意分野を活かした厚みのある駆け引きあるアクションが魅力的だ。「ケイバーライト」という周囲の重力を無効化するアイテムを使った、現実では出来ない壁走り・自動車を浮かせながら空中で発砲する。空間全体を戦場とした見せ方には目を見張るものがある
アニメーター江畑諒真(えばた りょうま)の凄さ
私は普段アニメ―ターや原画マンの名前を確認しないが、江畑さんの名は知っている。なぜ知ったかというと、彼が様々なアニメの主題歌で1人原画をやっていたからである。通常のアニメーション原画は1話当たり10人~20人で分担作業するのが基本だ
いちアニメファンから見ると監督やシリーズ構成、キャラクターデザイン、音響監督は基本的に1人のため分かりやすい。しかし原画は複数人居るし、原画より人数が少ないとはいえ各話の作画監督も2~3人は居るし、誰がどこの映像を作ったのかが分からないが残念だ
江畑諒真さんは『プリンセス・プリンシパル』の剣術アクションのほかに、
- アブソリュート・デュオOP「Absolute Soul」鈴木このみ
- 天体のメソッドED「星屑のインターリュード」fhána
- グリザイアの楽園ED「黄昏のスタアライト」南條愛乃
- グリザイアの楽園10話(最終話)絵コンテ
とやっている。上3つのOP/EDに関しては絵コンテ→演出→原画→作画監督という流れを全て1人で制作したため驚きだ
GIF画像
GIF画像(アブソリュート・デュオOP)
GIF画像(天体のメソッドED)
GIF画像(グリザイアの楽園第10話)
キャラクター1人1人に魅力的なバックボーンがある
アンジェとプリンセスの過去、ドロシー・ちせの父親 親子の因縁と愛、ベアトリスがなぜ人工声帯になったのか
メインキャラとなる5人のエピソードはもちろん、各話数にごとに出てくるサブキャラたちも1人1人の人生を歩んでいる。難病をかかえた妹を救うため、お金と引き換えに情報提供する青年。スパイ学校でアンジェと同期だったが、敵国側となった女性
それぞれの事情と信念を抱えらがら、己に出来る最良の選択をしていく
東西に分裂した19世紀末ロンドンという設定が緻密
架空のロンドンを舞台に繰り広げられる戦いが良い。そのバトルを支える設定と背景。無重力バトルというSFテイストでありながら、通信と移動手段はあまり発展していない。アンバランスなのに上手く融合した世界になっている
細部まで作りこまれた背景にこだわりを感じる。レンガの積み方1つとっても色々とあるが、今作はロンドンが舞台ということでイギリス式の積み方になっている
私はレンガの積み方に種類があるとは昨日まで知らなかったが、橘監督らのインタビュー記事を読んだことで新たな知識の獲得と制作陣の情熱を知ることが出来た
煉瓦の積み方には大きく分けて4つあり、
- イギリス積み
- フランス積み(フランドル or フレミッシュ積み)
- ドイツ積み(小口積み)
- 長手積み
画像で表すと以下である
↑イギリス式…1段ずつ短いもの、長いものと交互に積んでいっている。廃材が最も少なく合理的な積み方
↑フランス式…同じ段に短いもの、長いもの両方を使用し、ずらしながら積んでいく。レンガらしい見栄えで美しいとされている
↑ドイツ式…短い面(60mm*100mm)だけを見せるようにジグザグに積んでいく
↑長手積み…長い面(60mm*210mm)だけで積んでいく。厚さが100㎜しかならないため、4つの中で最も強度が薄い作り方。そのためさほど強度が必要ない花壇や800㎜以下の塀で使われる
『プリプリ』のメインテーマ“「見えない壁」を壊すために”
正直、初見視聴の段階では12話ラストの結論に納得が行かなかった。たしかに1話1話のクオリティーは高い。台詞の言い回しのかっこよさ・アクションシーンの迫力・声優の演技・再視聴したときに分かるキャラクターそれぞれの想い どこを切り取ってもスキがない作品だ
しかし、作中でも重要なテーマである「見えない壁」が解決されていないと感じるのがマイナスポイントだ。結局ロンドンは東西に分裂したままだし、チーム白鳩は最後まで戦うことなくモロッコ王国カサブランカに亡命という“逃げ”の選択をした
続編である劇場版『プリンセス・プリンシパル Crown Handler第1章』で、すぐに舞台が英国に戻ったものの現実時間では最終話と1章の期間が3年4か月も空いているし、CrownHandlerも全6章構成である為あと3年はかかると推測できる
いずれにせよ完結してない作品を評価するのは難しい。特に品質が高ければ高いほど自身の見方に迷いが生じる。つまらない作品だったり、低クオリティーであれば切り捨てて思考を放棄すればいい。だが、プリプリはハイクオリティーなうえに良いテーマを問いかけて来てくれる
結論に不満。しかし、「見えない壁」という表現が頭の中で反芻する
個人的に「良い作品」「良いアニメ」というものは感情に左右されず、時間経過によって色あせることない…いや、むしろ時間が経つにつれて徐々に自身の思考として吸収されていくものを「良い」と考えている
昨今のアニメおよびアニメファンというのは「キャラクター至上主義的」な作り方,売り方,見方が目立つ。とにかくキャラクターに露骨な可愛さ,かっこよさ,色気を持たせてから愛着を湧かす。見ていてヘイトが溜まるような人物は出来るだけ避ける。悪役も取って付けたような“良い人エピソード”を盛り込む
たしかにこの手のアニメは売れやすいし、娯楽としても気軽に見やすい。制作陣にとっても視聴者にとっても双方おいしい状況ではある。しかし、私のような一部ひねくれたアニメファンにとっては息苦しくて仕方ない。プリプリはキャラに愛着が湧くものの「分断された世界観」というものがベースになっており苦痛を感じない
「良いアニメ」というものは時間経過によってさらに良くなると書いたが、それについてより詳しく解説する
複数のアニメを同時平行で見てたり、過去アニメや前クールのものを一気見してたりすると、記憶の欠如が起きやすい。大まかなストーリーは覚えているが、詳細なセリフや演出意図というものを忘れてたりする。これはどんなにアニメに見慣れていようが洗礼された解釈を生み出すのは不可能だ
私は『プリプリ』にてハイクオリティーながら結論に不満があったため「ダメアニメ」認定をして切り捨てていた。しかし、視聴から1~2か月後 思考の海に潜っていると「見えない壁」という表現を思い出す

「見えない壁」ってなんだっけ? たしかアニメの台詞だったはずけど、何の作品だっけ?? ……「みんなを分ける見えない壁 私はその壁を壊してやるの」なんだっけー、何かのアニメのヒロインが言ってた気がする…
この時点では完全に思い出すことが出来なかったが、googleで様々なキーワードを入力し台詞とタイトルを一致させた。切り捨てていたと思っていた… しかし、プリンセスシャーロットが構想した想いを受け継ぎ、10年越しに実現しようとしたスリ出身の“アンジェ” そして、1度は忘れてるが思い出した私
彼女の想いは時間を越えて次元をも超える力強さがあった。このアニメで「言ってるうちに、考えているうちに本当になる嘘もある」というのが学べた
参考文献/サイト




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